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1762 Chapter 1759: Galanton

    「……やはり何もないようだな……」


    ネルヴァは漆黒の壁を右手の掌で静かにさすりながら、さも無感動に言った。


    すると、伽藍堂の室内では思いの外声が反響し、部屋の反対側にいたアスタロトに充分聞こえた。


    アスタロトも漆黒の壁に手をやり、こちらは苦渋の表情を浮かべて言ったのだった。


    「……そうだな……」


    アスタロトはそう言うと、忌々しげに天井を見上げて呟いたのだった。


    「この部屋には何かあるはずだと思ったのだがな……」


    するとネルヴァがコツコツと固い靴音を響かせながら、アスタロトの元へと近づいてきた。


    「見るからに曰くありげな部屋だからな。だが残念ながらただの空き部屋だったようだ」


    ネルヴァの声は低くくぐもった声質ながら、伽藍堂の室内では良く響いた。


    アスタロトはその声を腹立たしげなものとして聞くも、これ以上ここで粘ったところで埒が明かないと思い、諦めることとした。


    「仕方が無い。他の部屋を当たることとしよう」


    弱々しげにアスタロトは言った。


    するとそれをネルヴァが笑った。


    「ずいぶんと気落ちしているようだな?」


    だがアスタロトは、ここは特に腹を立てることはなかった。


    「ああ、ガイウスを早いところ復活させてあげたいものでね」


    するとネルヴァが皮肉な笑みを口元に浮かべた。


    「ほう、ガイウス?シュナイダーか。だが本当にそれがお前の主たる目的なのか?」


    意味ありげに笑うネルヴァに、アスタロトが据えたような目で睨みつけた。


    「……何が言いたい?……」


    ネルヴァは皮肉な笑みを口元に湛えたまま言った。


    「お前の主たる目的は別にあるんじゃないかと思ったのでな」


    アスタロトは極力感情を抑えようとするかのように、深く大きなため息を吐いた。


    そして改めてネルヴァを鋭い眼差しでもって睨みつけつつ、言ったのであった。


    「わたしの目的は我が友ガイウス?シュナイダーを復活させることだ。それ以外には何もない」


    アスタロトは力強く言い切ると、ネルヴァをさらに強く睨みつけた。


    ネルヴァはその視線を真正面から受け止めつつ、皮肉な笑みをさらに深くして言ったのであった。


    「そうではあるまい?お前の主たる目的は実のところ、ルキフェルにあるのではないかな?」


    ネルヴァは確信を持ってそう言うと、睨むアスタロトを逆に睨み付けるのであった。
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