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730 Lesson 728: Loss

    1


    「あれが千年竜だと……」


    シェスターは崖下にだらしなく寝そべる巨大なナメクジのような物体を見て、驚愕の表情を浮かべながら小さな声でささやくように呟いた。


    するとレノンが片眉を跳ね上げ、口角を上げて微笑んだ。


    「ええ、千年竜です。ですが、もっと正確に申し上げると千年竜のなり損ない……といったところでしょうか」


    「なり損ない?それは一体どういう意味だ?」


    「言葉通りの意味です。ですが、ここではなんですからとりあえず下に参りましょう。そこでご説明いたしましょう」


    レノンは言うやすぐさま歩き出し、崖下へ通ずる坂道をしずしずと下っていった。


    シェスターはその背を見送ると再び崖下をのぞき込み、エスタで見たあの恐るべき異形を思い起して眼下の物体と比較しようと試みるも、あまりの違いに同一のものとは到底思えなかった。


    「……あれが千年竜……いや、そのなり損ないか……」


    シェスターはそう呟くとロンバルドと目を合わせ、レノンの後を追って崖下へと下っていくのであった。


    2


    「……近くで見るとかなり大きいな……こんなに近づいても大丈夫なのか?暴れたりは……」


    崖下に降りたシェスターは、千年竜のなり損ないからわずか十M程の距離からその巨体を見上げて少々不安げにレノンに問うた。


    「大丈夫ですよ。今この物体は寝ておりますので……。実を申しますと先ほどから聞こえてきました咆哮は、起きている際のものではございません。言うなれば……いびきのようなものかと」


    「あれがか?……ふうむ。まあそれはよしとしよう。それよりも……先ほど貴公はこれが千年竜のなり損ないだと言ったな?その意味を教えていただこう。実際間近で見ると確かに大きいが、我々がエスタで見た千年竜はこれよりも一回り……いや二回りは大きかったかと思う。それと関係はあるのかな?」


    「ええ。仰るとおりです。これは確かに二回りは小さいでしょう。故になり損ないなのですよ」


    「発動に失敗した……というわけか?」


    「まあそういうことです」


    シェスターの追求を、レノンはあっさりと認めた。


    「ずいぶん素直だな?こうも素直に認められると少々気味が悪いが」


    するとレノンが軽く相好を崩した。


    「それはまた大層な言われようですな?」


    レノンは余裕綽々といった様子で笑って受け流した。


    するとそれを見てシェスターが、少々不機嫌そうな顔を作って言った。


    「ふん。まあこちらはなんといっても虜囚の身なのでな。軽口の一つも言いたくなるというものなのだよ」


    「なるほど。それはわからないではありません。なのでその程度の軽口でしたらどうぞご自由に」


    「ああ、そうしてもらえるとありがたいね。ところで肝心の説明は一体いつになったらしてくれるのかね?」


    「説明?……ああ、千年竜のなり損ないとはどういう意味かという説明ですね?」


    「そうだ。他に聞きたいことも特にないんでね。それを教えてくれるとありがたい」


    「承知しました。ではあちらにあります建物に移動するとしましょう」


    レノンが指し示した先には、シェスターたちが見たこともない半球状のドーム型の建物があった。


    「ご紹介したい人物もおりますれば、是非ともあちらに……」


    レノンは言うや、またも二人を置き去りにしてドーム型の建物に向かって歩いて行った。


    シェスターたちはもはや慣れたもので、すぐさま無言でその後を追うのであった。
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