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102 Episode One Hundred Signals

    1


    「……お前……一体……何者だ?……」


    ガイウスはそれだけのことを、喉を必死に振り絞りながらようやく言うことが出来た。


    「……わしか……わしの名はシグナス。ほれ、あそこにおるカルラの兄弟弟子だ」


    そういうとシグナスはまたも乾いた声で笑い出した。


    「……カルラの……兄弟弟子……」


    「ああそうだ。あれとはずいぶん長い付き合いでな……もっともこんなところで出会うことになろうとは思ってもみなかったがな……」


    「……お前が偽書をカリウスに売ったのか?」


    「カリウス?……ああ、あの陰鬱な男か……そうだ、もっともあの男はわしのことは露天商ぐらいにしか認識しておらんがな」


    「ああ、そう言っていたよ。偽書は露天商から買ったってな」


    「そうじゃろう、そうじゃろう。ずいぶんと間の抜けた顔をしておったからのう」


    シグナスはさも愉快そうに顔をくしゃくしゃにして笑った。


    「なぜあんなものを売ったんだ?」


    「……なに、ちょっとした戯(たわむ)れだな……」


    ガイウスはシグナスの言い様に若干イラついたものの、すぐに冷静さを取り戻した。


    「……そうか、どうやらお前があれを書いた張本人のようだな?」


    するとシグナスはガイウスにとって予想外の返答をした。


    「わしが偽書をか?……それは無理だ。カルラにもそんなことは出来まい。あれは特別製だからな」


    「じゃあ、あれを書いたのは誰なんだ!?」


    「そんなの決まっておろう。わしとカルラの師匠じゃよ」


    2


    「カルラの師匠……伝説の大魔導師の……師匠……」


    ガイウスはゆっくりと噛んで含めるように自分自身に向けて言った。


    「さて、わしはお前の質問に答えてやった。次はお前が答える番だぞ」


    シグナスはそう言うと、口角を上げていやらしい顔つきとなった。


    「お前は前世の記憶をどれだけ持っておるのだ?」


    「……ほとんどない……」


    「そうか……では多少はあるわけだな?」


    「……ああ、だが前世での名前も年齢もなにも憶えちゃいない……」


    「だがあちらの世界(??????)の知識だけはある……というわけだな?」


    ガイウスはそこで一度大きくつばを飲み込んだ。


    そしてゆっくりとした口調でシグナスに問いかけた。


    「あちらの世界のことを知っているのか?」


    「ああ、多少はな」


    ガイウスはシグナスの返答に、勢い込んで問いかけた。


    「教えてくれ!俺はなぜ転生したんだ?」


    だがシグナスはそっけない態度でガイウスの質問をあっさりとかわした。


    「それは知らんよ。転生者の仕組みはまだ解明されておらんのでな」


    だがガイウスはそれにもめげずに質問を続けた。


    「あんたさっき、俺に転生は何度目だって聞いたよな?」


    「ああ、聞いたな」


    「その、あんたの言う転生者ってのは何度も転生するのか?」


    「……おそらくはな。転生者の多くは前世の記憶をおぼろげながらもいくつも抱えておるのでな」


    「……いくつもの記憶……」


    「お前はまだこの世に転生してから日が浅いようじゃ。だからまだ思い出せておらんだけだと思うぞ」


    ガイウスはシグナスの言葉に誘発されて記憶の源泉を必死に辿ろうとするも、頭の中が深い霧に包まれたような感覚を覚えて、くらくらとした眩暈(めまい)に襲われるのだった。
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