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AliNovel > Oi, Hazure Sukiru da to Omowareteita “Chiito Koodo Soosa” ga Bakemono Sugiran da ga > 44 Ahead of Kensei.

44 Ahead of Kensei.

    ★


    「ここは……?」


    目覚めたとき、僕はやはり見慣れぬ場所にいた。


    王城……? だろうか。


    けれども、現代のアルセウス王城とはどこか違う。装飾の配置も微妙に異なっているような。


    加えて、一緒にいたはずのレイやレミアもいない。


    その代わりに――またも彼(?)がいた。絶対に会えるはずのない、初代剣聖ファルアス?マクバが。


    「女神よ……どうですか。やはり避けられぬ運命ですかな」


    「ええ。人の子ではさすがに不可能でしょう」


    そう返答するのが、驚くべき美貌を備えた女性。心なしか、彼女の周囲を儚げな光が包んでいる。


    というか、女神って……


    嘘だろ?


    おとぎ話に登場する、女神ディエスのことか?


    「ま、致し方ありませんね」


    女神と呼ばれた女性はどこか悟った表情で呟く。


    「《転生術》は元より禁忌の術。それに手を染めるくらいならば、後世の子に未来を託すのが妥当でしょう」


    「後世の子……。やはり、私の子孫ですか」


    「ええ。あなたには猛き剣士の血が流れています。それを受け継ぐ子孫も、必ずや才に恵まれるでしょう」


    「《チートコード操作》……でしたか。理(ことわり)を超えた力を与えるからには、精神的に熟した者である必要がありますな」


    「ええ。ですからこのスキルを授けるのは、マクバ家で最も精神的に優れた者に限定します」


    「……そうですな。《剣聖》の名をいいように扱う馬鹿者が現れんとも限りません」


    そして女神はなんと、僕のほうへとくるりと振り向いた。


    その表情は、どこか物憂げで。


    「ふふ……。数千年後には、この光景をあなたの子孫が見ていることになるんですね。私には、あなた(???)がどんな名前なのかもわからない」


    「あの」


    意を決して問うてみる。


    「すみません。……僕のことが見えているんですか?」


    だが返事はない。


    やはり僕は《映像》だけを見せられているようだ。数千年前、女神と初代剣聖がつくりあげた謎のやり取りを――


    そして……数秒後。


    女神は、そっと僕に向けて手を伸ばす。


    「ファルアスの子よ。あなたは現在、きっと苦難を強いられているでしょう。ファルアスの子にも関わらず、授けられたのは前例のないスキル。周囲からはガッカリされたかもしれません」


    「っ…………」


    痛いところを突かれた。


    「でも、覚えていてください。あなたは誰よりも素敵で……誰よりも強いのだと」


    「ふふ、では私からも一言」


    初代剣聖ファルアスも、僕の瞳をしっかり見据えた。


    「我が子孫よ。おまえはきっと、いままで足掻き苦しんできただろう。だが忘れるな。おまえには――私たちがついている」


    なんだろう。


    僕のことは見えていないはずなのに、心を込めて訴えてくるような……


    ほろり、と。


    僕の瞳を一筋の滴が伝う。


    実家を追放されたことで傷ついた心が、すこしだけ癒された気がした。


    「あともうひとつ」


    言いながら、ファルアスが悪戯っぽい笑みを浮かべる。


    「我が子孫よ。もし親族に不当な扱いをされたのであれば、思いっきり叩きのめしてしまえ! そのほうが当人のためにもなる」


    はは。


    思いっきりか。


    もうマクバ家とは関わりを持たないと決めたけれど……まあ、悪名高いダドリーのことだからな。今後、なにをしてくるかもわからない。


    「私からもひとつ」


    女神も僕に向けて口を開いた。


    「あなたは今頃、謎の宝石について悩んでおられるでしょう。ですがそれはあなたが持っていてください。あなたが持っていれば、原則(??)は暴発しないはずです」


    ……そうなのか。


    たしかに、さっき暴発したときはレミアが持っていたからな。


    少なくとも、昨晩では何事も起こらなかった。


    ……というか、すごいな。


    この二人、僕の道に応じてヒントをくれてるのか。女神と初代剣聖――その名は伊達ではない。


    だが、いつまでもこの時間は続かない様子。


    女神は切なそうに、見えていないであろう僕を見つめた。


    「……そろそろ時間切れですね。幸運を祈っています。あなたの道に、幸あらんことを」


    「なあに大丈夫でしょう。私の血を引いているのですぞ」


    ファルアスは快活に笑い、同じく見えていないはずの僕に片腕を差し出した。


    「また会おう、我が子孫よ。決して――馬鹿者に屈するでないぞ」


    その瞬間。


    僕の意識は、またしても遠のいた。


    ★


    「スっ……! アリオス!!」


    レイの泣き声で目が覚めた。


    うっすら目を開けると、寝転がる僕にひたすら泣きじゃくっているお姫様。


    相当に心配してたんだろうな。


    目がかなり腫れている。


    「レイ……? ここは……?」


    どうやら、レミラの研究所に戻ったようだな。周囲には見覚えのある光景が広がっている。


    「アリオス! 無事なの! 無事なのね!?」


    「ああ。どこも大事ない」


    「……っ! よかったぁ……!」


    「お、おいっ! ふがふが……」


    そうして抱きついてくるレイに、僕は呼吸ができなくなった。おい、ものすごい勢いで押しつけられてるぞ。


    「……にしても、不思議な現象じゃ」


    そう呟くのは、凄腕の魔導具師レミラ。腕を組み、なにかを考え込むように二の句を継げる。


    「アリオス殿。もしかして、意識が別次元に飛ばされてはおらんかったか?」


    「別次元……」


    言い得て妙だな。


    たしかにあの現象は、まったく未知の空間に飛ばされたに等しいが……


    「ううむ。神の遺石……なかなか興味深い……」


    ――レミラが呟いた、その瞬間。


    ジリジリジリジリ!!


    ふいに大きな機械音が響きわたり、僕たちは肩を竦めた。


    これは……通信機器か。


    レミラが王都に住んでいたときに開発した魔導具で、遠方にいる者とも通話ができる優れ物だ。


    ……まあ、あまり普及されていないので、ギルドなどの施設にのみ置かれている状況だが。


    「はい。こちらレミラ……」


    レミラが受話器を手に取る。


    「なんじゃアルトロか。アリオス殿ならもう来ておる――なんじゃと?」


    レミラがふいに眉をひそめる。


    「わかった。すぐに伝えよう」


    そう言って深刻な表情で通話を切ったレミラに、僕は心なしか嫌な予感を覚えた。


    「アリオス。緊急事態じゃ。ラスタール村にダドリー?クレイスが現れた模様。あなたの召使い――メアリーが危ないとのことじゃ」
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